ル・ジュルナル・ド・パリ 〜パリ印象主義時代の音楽日記 (1864−1922)
プロデューサー:ルネ・マルタン 独占インタビュー
 
東京・新潟・びわ湖・金沢で「ラ・フォル・ジュルネ“熱狂の日”音楽祭2010」を大成功させたばかりのルネ・マルタンが、2010年5月6日(木)の午後、大阪にて記者会見を行い、「ル・ジュルナル・ド・パリ」について熱く語りました!
完成した「ジュルナル」のチラシの前でポーズを取るルネ・マルタン
記者団の質問に答えるルネ・マルタン

Q:なぜ「印象主義時代」というテーマを思いついたのですか?
ルネ・マルタン(以下、M):フランス大使館の発案で2010年に日本で多くの印象派絵画の展覧会が開催されると聞いたときに、このプロジェクトを思いつきました!

 

Q:具体的には、どのような作品を取り上げるのですか?
M:アルベニス、シャブリエ、フォーレ、サティ、ドビュッシーといった、パリに縁の深い作曲家の作品を「年代順に」ピアノと室内楽で演奏することが、このプロジェクトのねらいです。「年代順に」音楽作品を聴いていくことで、作品が生まれた背景が浮き彫りになっていきます。
気をつけていただきたいのですが、「印象派音楽」というジャンルは存在しません。私自身、作曲家たち自身を「印象主義/印象派」という用語で呼ぶことは避けたいと考えています。私の目的は、美術において印象主義が華やいだ時代に、音楽の分野ではどのような創作が行われていたのかを明らかにすることです。あえて、“印象主義「時代」の音楽日記”と名づけたのは、そのためです。

 

Q:取り上げる作曲家について教えてください
M:
アルベニスは、今年2010年に生誕150年を迎えるスペインの作曲家です。パリに長年住んで、作曲活動を行いました。スペインの民族音楽から影響を受けた、色彩豊かな美しいピアノ曲をたくさん残しています。今回、アルベニスの「イベリア」を演奏する、ピアニストのルイス・フェルナンド・ペレスは、私が知るピアニストの中でこの作品集を最も素晴らしく奏でる音楽家です。
フォーレは、音楽史上、とても重要な作曲家です。音楽教育者としても有能で、ラヴェルの先生でもあります。フォーレの作品は洗練されており静かで、深いノスタルジーが感じられます。今回来日するピアニストのジャン=クロード・ペヌティエは、フォーレ作品の演奏における大家です。
サティは、音楽史上、大変ユニークな作曲家です。ドビュッシーとも仲が良かったのですよ。絵画的な作品を多く書いています。
ドビュッシーは、「印象主義時代」の作曲家の中で最もよく知られている作曲家ではないでしょうか。彼はしばしば、「印象主義者の作曲家」とレッテルを貼られていますが、おそらくそれは、和声やリズムの概念を拡大した作曲家だからだと思います。

 

Q:そもそも、なぜ今回のプロジェクトに「フランス音楽」を選んだのですか?
M:それはもちろん、フランス音楽が大好きだからです!私自身、実はフランス人ですし、、、(笑)私は様々な国の音楽が好きですが、フランス音楽はとりわけ、官能的で夢幻的であり、特別な存在であると思っています。そういえば、ドイツの方々がフランス音楽をあまり好まないのに対し、イギリス人やイギリスの作曲家(ヴォーン・ウィリアムズなど)はフランス音楽を好む傾向があるような気がします。

 

Q:特におすすめの作曲家や作品はありますか?
M:私は、フランス音楽の中でもとりわけフォーレ、特に彼の「ピアノ四重奏曲」などの室内楽作品が大好きです。

 

Q:あえて「日本」でこのようなプロジェクトを立ち上げようとしたのはなぜですか?
M:「印象主義時代」のアーティストたちは、アジアの文化に強い興味を示していました。19世紀の終わりに、パリで万国博覧会が開かれたとき、フランスにいた作曲家たちは東洋の絵画や音楽に触れ、多くの驚きや発見を得ました。ドビュッシーが1889年の万博で、インドネシア・ジャワ島のガムラン音楽を耳にして深く感動したエピソードは有名です。「印象主義時代」のフランス音楽には、何らかの形でアジアや日本と繋がっているものが少なくありません。
私自身、日本でラ・フォル・ジュルネ音楽祭(以下、LFJ)を開催するようになって、日本への愛着が日に日に強まっています!

 

Q:日本では、LFJを毎年ゴールデンウィークに開催していらっしゃいますが、LFJと「ジュルナル」のコンセプトの違いは何なのでしょうか?
M:LFJは、ある特定の作曲家をテーマとし、数多くの演奏会を一度にお届けする「お祭り」です。「ジュルナル」シリーズは、まるで日記(=ジュルナル)をめくるように、ある時代のある音楽の潮流に焦点を当て、じっくりと語っていくシリーズです。例えるならば、「ジュルナル」シリーズは「音楽の旅」のようなものです。あくまでも年代順にこだわって作品を紹介することで、どのような時代背景から作品が生まれたのかがわかるのです!今回の「パリ」のシリーズでは、音楽史における「現代性」が、時とともにどのように現れてきたのかが、手に取るようにわかっていただけるのではないでしょうか。

 

Q:「ジュルナル」の楽しみ方を教えてください
M:LFJと同じで、一公演の時間がとても短く60分程度で、入場料もとても安いです。ですから、クラシック音楽の演奏会に慣れていない方々も、勇気をだして遊びに来てくださいね。また「ジュルナル」の場合は、「年代順」にじっくりと作品を味わい、歴史的にクラシック音楽を紐解くことができます。もちろん、好きな作品や気になるお目当ての作品を聴きに、ぶらりと足を運んでくださる方々も大歓迎です!印象派の絵画を鑑賞してから、演奏会に来るのもいいですよね。

 

Q:来年以降の「ジュルナル」では、「ウィーン」と「サンクトペテルブルク」というテーマが候補に上がっていると聞きました
M:まだ来年以降のことは正式に決まっていませんが、、、。いずれの場合も、19世紀の終わりから20世紀初めにかけての音楽を取り上げるのが私の理想です。もしもこのプロジェクトを通して、パリ、ウィーン、サンクトペテルブルクの3都市の関係を音楽で浮き彫りにできたら嬉しいです。音楽的に豊かな時代ですから。10年程度の短いスパンで、一気に、そしてドラマチックに音楽史が変わっていく時期なのです!ある都市で同時期に、すばらしい作曲家が7〜8人も活躍していたというのは、エポックメイキングな出来事だと思いませんか?

 

Q:日本の聴衆には何を望んでいますか?
M:おこがましい言い方にはなりますが、LFJや「ジュルナル」を通じて、日本の聴衆をもっと変えていきたいと思っています。今年は日本の4都市でLFJを開催しましたが、お蔭様で、どの都市でも平均して1公演95パーセント以上のチケットが売れました。LFJによって、クラシック音楽の楽しみを発見してくださったお客さまが、「もっとクラシック音楽について知りたい!」と感じて、さらなる好奇心を持って「ジュルナル」に足を運んでくださったら、心から嬉しいです。

 

Q:LFJが日本に定着してきましたが、どのようにこの現象を受けとめていますか?
M:日本でLFJを始めてから、今年で6年目になります。これまでクラシック音楽のコンサートには全く足を運んだことのなかった新しいお客さまや、「クラシック音楽を自分は聴かない」と思い込んでいた方々、家族連れの皆さん、そして多くの若者が、LFJを毎年楽しみにしてくださるようになりました。
クラシック音楽が、ジャズやポップスなどの他のジャンルと同じように、決して「難しい」ものではないということを、分かっていただけたはずです。年に1回、LFJにだけ音楽を聴きにくるのではなく、各地で行われている様々な多くのクラシック・コンサートにも、皆さんが足を運んでくれることを切に願っています。

 

Q:「ジュルナル」シリーズを世界に展開していく予定はありますか?
M:「ジュルナル」シリーズは日本で生まれた企画です。まだ「ジュルナル」と題したプロジェクトを日本以外で開催したことはありません。将来的には、ナントやリオデジャネイロなどでも開催していきたいと思っています。そうなれば、日本から国際的な文化プロジェクトが世界に発信されることになりますね!
今年2010年はショパン・イヤーです。2008年に第1回目の「ジュルナル」シリーズである「ジュルナル・ド・ショパン(ショパンの全曲演奏会)」を日本で開催しましたが、このアイデアを、今年のナントや東京のLFJですでに応用しました。このショパン全曲演奏会は大変好評でした。2012年はドビュッシーの生誕150周年を祝う、記念イヤーですから、どこかの国で「ル・ジュルナル・ド・パリ」を開催するかもしれません。


 

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